NHK連続テレビ小説・朝ドラ「らんまん」が、神木隆之介さん主演で2023年4月からスタートし、主人公の槙野万太郎と寿恵子（すえこ）が結婚し新章に突入。
このドラマは、植物学者・牧野富太郎（まきの・とみたろう）をモデルに植物に一途に情熱を注ぎ続けた主人公・槙野万太郎（まきの・まんたろう）の波乱万丈な人生を描いたドラマです。
万太郎と寿恵子が故郷の高知で結婚し再び東京に戻り、植物学者として新たな展開を迎えています。
新章の注目の一つが、万太郎と要潤さん演じる田邊教授との関係。2人の関係がそれまでとは大きく変わり、確執が生まれそうな予感です。
そんな中、戸隠草（トガクシソウ）の新種発表を伊藤孝光に取られてしまう史実でも有名なトガクシソウ事件【破門草事件】が起きてしまい、史実通りだと万太郎と田邊教授の関係が大きく変わる出来事が起きそうです。
そんな田邊教授のモデルとなっているのが、実在の東京大学（当時の帝国大学）植物学教室の矢田部良吉（やたべりょうきち）教授ですが、史実では後に東京大学を辞めらせられる、非職となる事態になります。
一体どうして矢田部教授は大学を辞めさせられたのでしょうか？？
今回は朝ドラ「らんまん」の田邊教授のモデルとなった矢田部良吉の大学の非職理由についてご紹介していきます。非職理由は権力争い？また、動物学の美作教授が関係している！？それとも鹿鳴館が関係している？
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矢田部良吉の非職の伏線？トガクシソウ事件や牧野富太郎との確執
らんまん田邊教授の妻・聡子のモデルは矢田部教授の18歳年下の妻・柳田順でスキャンダルに！？
矢田部良吉とは？
田邊教授のモデルと言われている矢田部良吉さんは、東京大学（当時の帝国大学）植物学教室の教授でした。
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矢田部良吉さんは1851年生まれ。牧野富太郎さんは1862年生まれなので、11歳年上になります。
矢田部良吉さんの父親は蘭学者で、静岡に生まれました。その影響もあり13歳のころに江戸に出て、江川塾で英語や数学を習い始めます。
19歳のときに大学校中教授に任命されますが、その年にアメリカに渡り、6年間留学。日本人として初めてコーネル大学に入学。
大学ではいろいろな教養を身に着けたそうですが、専門として選んだのが植物学。
帰国して東京大学初代植物学教授となります。
ドラマの中で英語で講義をしていた田邊教授ですが、これは実話で、矢田部教授も英語で授業をしていたそうです。
矢田部良吉さんの出張は数十回にもなり、休日には東京近辺の植物採集をしていたとか。このように標本集めに尽力されました。
教授をしながら欧米の教科書の翻訳をしたり、全国へ植物採集に出かけていたそうです。
またローマ字運動や、女子教育にも熱心だった矢田部良吉さん。
女子教育に熱心だったことも朝ドラらんまんで描かれていましたね。
東京高等女学校の校長に就任されますが、スキャンダルに見舞われ同校は廃止されます。
その後『日本植物図解』や『日本植物編』などを出版。
そして、1891年に東京大学を非職となってしまいます。
非職となったあとも、植物教室で「日本植物図鑑」の出版のため、教室で執筆と研究をしていました。
1894年に免官となり1895年、44歳のときに東京高等師範学校教授に。英語を担当し、1898年に校長に就任しています。
東京高等師範学校に来てからは、植物学には携わらなかったそうです。
そして、矢田部良吉さんは1899年、鎌倉沖で遊泳中に溺死し、47歳という若さで生涯を終えました。
矢田部良吉と牧野富太郎との出会い
朝ドラ「らんまん」と同様に東京にやってきた牧野富太郎さんも、東京大学植物学教室（現在の小石川植物園内）で初代植物学教授の矢田部良吉さんに面会します。
矢田部教授に富太郎さんが面会した時、松村任三さん、大久保三郎さんという2人の助教授がいました。
らんまん：田中哲司が登場 東京大学植物学教室の助教授役 万太郎の“障壁”に？ #朝ドラ #朝ドラらんまん #徳永政市 #田中哲司 https://t.co/E8rcNGex7W
— MANTANWEB (まんたんウェブ) (@mantanweb) May 14, 2023
ちなみに、松村任三は、朝ドラ「らんまん」では、田中哲司さん演じる徳永政市助教授のモデル、そして、大久保三郎は今野浩喜さん演じる講師の大窪昭三郎だと思われます。
【そこに愛はあるんか？】NHK朝ドラ「らんまん」今野浩喜演じる講師の大窪登場 ネット「すっかり役者さん」「そこにアポはあるんか！？」https://t.co/4RUiTFpUdw#朝ドラらんまん の第32話（16日放送）。今野浩喜演じる大窪昭三郎が登場した。
— イザ！編集部 (@iza_edit) May 16, 2023
そして、「土佐植物目録」に挑んだ才能を認められ、富太郎さんは、東京大学の植物学教室への出入りを許されて、専門書籍や植物標本を自由に利用できるようになりました。
またらんまんで制作された植物学雑誌の経緯も、ほぼ史実と同じで、富太郎さんたちが打診した雑誌の制作について快く承諾してくれた矢田部教授。当初は2人の関係は良好でした。
一方、ドラマと同じように、富太郎さんは植物学教室で仲良くなった市川延次郎さん、染谷徳五郎さんと一緒に日本の植物学について語り合う仲になり、3人で植物学の雑誌の刊行を思いつきます。そして3人は原稿を書いて、出版の準備を整えて、青長屋の主であった矢田部良吉教授に了解を求めました。
すると矢田部教授はこの申し出を快諾してくれて、学会で発行すると言ってくれ、他の助教授や学生たちの協力を経て無事に発行するに至ります。
と言うように、牧野富太郎さんと矢田部教授の関係は非常に良好なものでした。
矢田部良吉の非職の伏線？トガクシソウ事件や牧野富太郎との確執
朝ドラ「らんまん」でも描かれていた矢田部良吉の身に起こった歴史的事件の「トガクシソウ事件」。
トガクシソウ事件は日本の植物学の歴史において、あまりにも有名な事件として、牧野富太郎さんに関する書籍の多くにも紹介されています。
伊藤孝光のモデルは実在の植物学者・伊藤篤太郎さんだと思われます。
伊藤孝光のモデルは伊藤篤太郎！矢田部良吉教授と破門草事件で確執？
ドラマと同様に、新種としての学名を
「トガクシソウ事件」は、日本特産の植物「トガクシソウ」にまつわる事件です。以下、複雑なその経緯です。
英国のケンブリッジ大学に私費留学をしていた、伊藤孝光のモデルの植物学者・伊藤篤太郎さんは叔父である伊藤譲さんが明治8年（1875年）に信州の戸隠山で採取した珍しい多年草の植物を明治16年（1883年）にロシアのマキシモヴィッチ博士に送りました。
マキシモヴィッチ博士はメギ科ミヤオソウ属の一種として判断して学名を「Podophyllum japonicum T.Itô ex Maxim. 」と名付けて発表しました。
当時は日本の植物学者は日本で採取した植物に学名をつけることができませんでした。日本には学名の基準となる信頼できるタイプ標本がなく、それを記載した文献も不足していたため、日本の植物学者は、植物の標本を植物相に精通した欧州の権威ある植物分類学者に送り、鑑定を仰ぐことが恒例となっていました。
当時、日本の植物学者から多くの鑑定依頼を受けていたのがマキシモヴィッチ博士でした。このあたりは朝ドラ「らんまん」でも描かれていて、マキシモヴィッチ博士の名前もたびたび登場していますね。
一方、伊藤篤太郎さんがマキシモヴィッチ博士に植物を送った翌年の明治17年（1884年）、東京大学理学部植物学教室の矢田部良吉教授（田邊教授のモデル）も戸隠山で伊藤篤太郎さんが採取した同じ植物を独自に採取して、小石川の東京大学理学部付属植物園に持ち帰り植栽しました。
植物が2年後の明治19年（1886年）に開花し、翌年の明治20年（1887年）にその標本をマキシモヴィッチ博士に送って鑑定を仰いだところ、明治21年（1888年）マキシモヴィッチ博士は「本種はメギ科の新属であると考えられ、「Yatabea japonica Maxim.」の学名をつけたいけれども、正式に発表をする確認のため、再度花の標本を送ってほしい」と回答しました。
この矢田部教授とマキシモヴィッチ博士のやり取りを大久保三郎助教授（らんまんの大窪（今野浩喜）のモデル）から聞いた伊藤篤太郎さん。
叔父が発見して自分がマキシモヴィッチ博士に送った「Podophyllum japonicum」が実はミヤオソウ属の一種ではなく、新種であることを知り、驚きそして、新しい属名が「Yatabea japonica」と矢田部教授に顕名されることを聞いて憤慨したそうです。
自分が最初に標本を送ったはずの植物、新種であったにもかかわらず、その学名に矢田部教授の名がつけられることが、同じ植物学者としては許せなかったのでした。
伊藤篤太郎さんが怒る気持ちもわかりますが、ここまでの経緯を見ていくと、悪いのは矢田部教授ではなく、マキシモヴィッチ博士？？？な気がしますが、当時は、新種の判断が非常に困難だったのかもしれませんね。
明治21年（1888年）伊藤篤太郎さんは英国ロンドンの植物学雑誌「植物学ジャーナル・英国と外国」に新属「Ranzania（小野蘭山に献名）」を提唱し、「Podophyllum japonicum T.Itô ex Maxim. 」をこの属に移したうえで、新たに学名をRanzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô」と「ITO」が入ったもので発表しました。
こうして伊藤篤太郎さんは、マキシモヴィッチ博士が矢田部教授に献名するはずだった「「Yatabea japonica」の命名を阻止して、発見命名者「(T.Itô ex Maxim.)」の名前が残ることになったのでした。
このことを知り、面目をつぶされた矢田部教授は伊藤篤太郎さんを破門して植物学教室への出入りを禁止しました。そのため、植物学者の間では、しばしばトガクシソウは「破門草」と隠語で呼ばれるようになったのでした。
そして矢田部教授と牧野富太郎さんの確執も大きな事件の一つだと思われます。
牧野富太郎さんは、ドラマと同様に植物図説集の出版準備に取り掛かります。当時、図鑑という言葉はなく、富太郎さんは掲載する植物図のほとんどは書き溜めていました。
そして自ら印刷所で印刷技術を身につけますが、植物の本を出そうという出版社が見つからず、自費で出版することになります。
自分で何もかも行って出版したのは、なんと実話だったんですね。
そして明治21年に「日本植物志図鑑」が出版され、これが植物学者の牧野富太郎が植物学界でのデビューになりました。
その内容は素晴らしく、当時の植物学者を驚かせ、皆絶賛しました。
以降、植物学者として、植物の学名、和名を日本の学会誌に発表した最初の日本人となったり、希少な食中植物を発見して、ムジナモと名付けたりと、その名は日本だけでなく世界で知られるようになります。
そして、1890年・明治23年に富太郎さんは、「日本植物志図鑑」の第6集を出版。
すると、矢田部良吉教授から突如、植物教室への出入りを禁じられてしまったんです。
矢田部教授によると、出入り禁止の理由は富太郎さんが出版を続けていた「日本植物志図鑑」と同様の本を植物学教室で出版することにしたので、所管する書物や標本を部外者には見せられないと言うものでしたが、本当の理由は、植物学者として輝かしい成績を残していた牧野富太郎さんへの嫉妬だったとも言われています。
以降、矢田部教授と牧野富太郎さんとの関係はもちろん良くなく(^^;牧野富太郎さんは、矢田部教授を見返すべく、厳しい環境の中でも研究に奮闘することになります。
そんな矢田部教授が後に、東京大学を辞めさせられるのですが、その理由は一体何なのでしょうか？以降でご紹介していきます。
矢田部良吉の非職理由①権力争いで美作教授が関係？
牧野富太郎さんは自伝で、矢田部良吉教授の非職について語っています。そしてその理由を、帝国大学理科大学の菊地大麓理科学長との権力争いによるものだと言う説もあると話しています。
あくまで噂のようですが、当時、菊地大麓理科学長と矢田部教授がことあるごとに対立していていたことは大学関係者の間で有名で、2人の関係性の悪化により、非職させられたと言われています。
菊地大麓理科学長と実弟の箕作佳吉教授が結託して、矢田部教授を追い出したという噂もあります。
ちなみに、箕作佳吉教授は、朝ドラ「らんまん」に登場した動物学の美作教授のモデルと言われています。
らんまん美作教授のモデルは箕作佳吉で実在の東京大学の動物学の教授？
「らんまん」あの田邊教授がマウント取られる 新キャラ・美作教授も登場でネット「焦ってるな」【ネタバレ】/芸能/デイリースポーツ online https://t.co/Wjn7Oh1L4c #朝ドラ #らんまん #大河ドラマ #どうする家康 #DailySports
— デイリースポーツ (@Daily_Online) July 9, 2023
矢田部良吉の非職理由②鹿鳴館やスキャンダル
また牧野富太郎さんは、他の非職の理由として、矢田部教授が鹿鳴館で夜ごとに催される舞踏会に率先して参加して、社交界の貴婦人を相手にダンスを踊るなど欧米主義を実践していたこと、そしてあるスキャンダルが原因だと語っています。
そのスキャンダルとは、矢田部教授の2番目の妻のことです。
そんな矢田部教授ですが、 医師・金沢良斎の娘である録子と1878年に結婚しますが、1887年10月に死別しています。
そして、1887年12月に再婚していて、後妻として18歳年下の妻・柳田順を迎え入れています。この柳田順は、朝ドラ「らんまん」の田邊教授の若い妻・聡子だと思われます。
柳田順さんは矢田部教授の18歳年下だけでなく、結婚当時まだ18歳だったそうです。
柳田順さんは自分が校長を務めていた東京高等女学校（お茶の水女子大学の前身）の教え子で裁判官・柳田直平の娘であり、男爵安東貞美の姪です。
そんな2人のことが小説になったと思われる出来事が。
大隈重信の立憲改進党系の小新聞「改新新聞」の紙上に小説家で新聞記者の須藤南翠による連載小説「濁世」の掲載が明治22年4月からスタートしたのですが、その内容は校長と女学生の関係を描いた作品で2人が欲情に身を任せる様を詳細に描いた挿絵入りの作品でした。
当時大きな話題になったのですが、誰が読んでも、そのモデルが矢田部教授と柳田順さんだとわかる内容だったそうなんです。
そのことから、この小説を読んだ一般読者から矢田部教授がひんしゅくを買い、女子教育に対して避難する風潮が社会に蔓延する一因となってしまったそうです。
このスキャンダルも少なからず、非職になった一因では？という説もあります。
しかしはっきりとした理由はわからないようです。
【最新追記】矢田部良吉がモデルの田邊教授の非職理由とは？
矢田部教授がモデルとなった田邊教授が大学を辞める非職がついに描かれることが判明しました！
8月18日放送の20週の最後の回で描かれます。
田邊（要潤）は、今後は欧米の学者に頼らず日本人自らが学名を与え発表すると、西洋の植物学者たちに宣言。新種かもしれない花の研究に一層打ち込むようになる。一方、期せずして同じ花と出会った万太郎（神木隆之介）も研究に没頭。新種かを見極めるためには果実の標本が必要だが、ついに田邊がそれを手に入れ新種と認定。「キレンゲショウマ」と名付ける。一歩及ばなかった万太郎だが、田邊を心から祝福する。しかし田邊は…
引用元：https://tv.yahoo.co.jp/program/116010841
妻の聡子に背中を押されたこともあり、植物学に専念する決意をした田邊教授は「キレンゲショウマ」を発見し新種として発表することに！
念願の新種発表と嬉しい田邊教授でしたが・・・
翌年の3月に田邊教授は大学から非職を命じられることに。事実上、大学から追放されたことになったのでした。
そして、ドイツから徳永助教授が帰国し、植物学教室の教授に任命される展開です。
史実通り、大学の教授を非職となった田邊教授。
明かされているあらすじでは、非職の理由は明らかになっていませんが、史実と同様に、新聞小説のスキャンダルがあったり、美作教授との対立関係もドラマで描かれているので、上記で説明した史実のように、美作教授との権力争いやスキャンダルが原因が理由として描かれるのでは？と思われます。
