朝ドラ「ブラッサム」第5週から登場した、イッセー尾形さん演じる翻訳家・小山牛丸(こやまうしまる)。
秋山格之介のモデルが芥川龍之介だったように、小山牛丸にも実在のモデルがいるのでは?と気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、小山牛丸がどんな人物なのか、モデルになった翻訳家はだれなのか?内田魯庵?なのか考察、そして演じるイッセー尾形さんについてご紹介します。
小山牛丸(こやま・うしまる)とは?「イワンの馬鹿」を翻訳した作家
朝ドラ「ブラッサム」
朝ドラ『#ブラッサム』初回視聴率15.5%
前作『風、薫る』上回るhttps://t.co/rFPgoGdOx0
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🌸キャスト&登場人物https://t.co/gLLbuKtLyx
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石橋静河、渡部篤郎、国仲涼子、松本穂香
八嶋智人、加賀まりこ、松たか子、染谷将太
遠藤憲一、井浦新、高良健吾、イッセー尾形
尾野真千子、錦戸亮 他 pic.twitter.com/O3s169e1AQ— オリコンニュース (@oricon) September 29, 2026
2026年秋の朝ドラ「ブラッサム」は、連続テレビ小説として数えて115本目の作品。放送開始は9月28日でした。
初回の視聴率は15.5%で、前作「風、薫る」を上回るスタートとなりました。
ヒロインの葉野珠(はの・たま)には石橋静河さんが抜てきされました。
珠のモデルになっているのは、山口県・岩国出身の作家、宇野千代さん(1897年生まれ)です。
原作はなく、宇野千代さんの人生をヒントにしながら、名前や設定を変えたオリジナルの物語になっています。
本が大好きで、自分でも物語を書くようになった珠。
岩国でつらい思いをしたあと、いとこの保(金子大地)と一緒に東京へ出て、作家への道を歩きはじめます。
第5週「狂騒で、東京」からは東京編がスタートし、作家や翻訳家、編集者など、文学の世界の人たちが次々と登場しています。
脚本を書いているのは櫻井剛さんと小松與志子さん。毎朝流れる主題歌は、YOASOBIの「咲き誇れ」です。
小山牛丸とは?「イワンの馬鹿」を翻訳した作家
📢新たな出演者のお知らせ
🌸作家・翻訳家
小山牛丸/ #イッセー尾形
珠が愛読する海外文学作品の翻訳家。年齢不詳、神出鬼没の人物。/
🗣#ブラッサム の放送は #9月28日スタート
\ pic.twitter.com/asjVOtm8r9— 朝ドラ「ブラッサム」公式 (@asadora_bk_nhk) August 27, 2026
小山牛丸(こやま・うしまる)は、イッセー尾形さんが演じる作家・翻訳家です。
公式サイトの人物紹介は、とても短い2文だけでした。
珠が愛読する海外文学作品の翻訳家。年齢不詳、神出鬼没の人物。
牛丸は、珠が大好きな『イワンの馬鹿』を日本語に訳した人物です。
牛丸が初めて登場した第21回(10月26日放送)の番組紹介も見てみましょう。
珠は近所の書店で、若手一番の作家・秋山格之介(高良健吾)や「イワンの馬鹿」を翻訳した作家・小山牛丸(イッセー尾形)と出会い、大きな刺激を受ける。
引用元:番組表.Gガイド
第5週で、珠は本郷の書店「ぶくぶく堂」で牛丸と出会います。
珠が本棚から手に取ったのは、小山牛丸が訳した『イワンの馬鹿』。
「牛丸先生の翻訳が心にスッと入ってくる」と話す珠ですが、店主の本田にとって牛丸は、本がないと騒ぎだす、ちょっと困ったお客さんのようです。
そこへ、仙人のようなあごひげをはやした男があらわれ、「戦争が始まる!」と大きな声で騒ぎだします。
その男こそ、あこがれの翻訳家・小山牛丸でした。
まじめに働く人たちの暮らしが貧しいままなのはおかしい、と世の中への不満をぶつける牛丸。
あこがれの翻訳家に会えて、感激する珠。牛丸は『イワンの馬鹿』の翻訳についてひとしきり語ったかと思うと、急に「書かねばならんことを思いついた」と言って、去っていきました。
公式の紹介どおり、まさに「神出鬼没」の人物ですね。
同じ第5週で珠が出会った作家・秋山格之介のモデルは、こちらの記事でご紹介しています。
秋山格之介のモデルは芥川龍之介【朝ドラ ブラッサム】
小山牛丸のモデルは実在の翻訳家の内田魯庵?
公式ではモデルは発表されていない
秋山格之介については、演じる高良健吾さん自身が「芥川龍之介をモチーフとした役」とコメントしていました。
ですが、小山牛丸については、2026年10月の時点で、公式からモデルが発表されていません。
ここからは、ヒントになる「『イワンの馬鹿』を翻訳した作家」という設定から、モデルを考察していきます。
『イワンの馬鹿』とはどんなお話?
『イワンの馬鹿』は、ロシアの文豪トルストイが、民話をもとに書いたお話です。
1886年に発表されました。
主人公は、ばか正直で、ただまじめに働くことしか知らない、三人兄弟の末っ子・イワン。
軍人の兄はいばって戦争をしかけ、商人の兄はお金もうけに走りますが、どちらも悪魔にだまされて失敗します。
ところが、イワンだけは悪魔のたくらみにも負けません。
王さまになっても、みんなと一緒に畑を耕し、「手にたこのある、働く人が食べられる国」をつくっていきます。
戦争やお金もうけを批判し、まじめに働くことの大切さを伝えるお話です。
ドラマの牛丸が「戦争が始まる!」と騒いだり、まじめに働く庶民の暮らしを心配したりしているのは、まさに『イワンの馬鹿』の考え方そのものですね。
珠と牛丸が出会ったころまでに『イワンの馬鹿』を訳したのは?
ドラマで珠が書店で牛丸と出会うのは、東京に来て1か月ほどたった1916年(大正5年)の10月です。
このころまでに『イワンの馬鹿』を日本語に訳していた人を、国立国会図書館の記録などで調べてみました。
- 1902年(明治35年):長谷川天渓が『大悪魔と小悪魔』という題で、雑誌『少年世界』に連載
- 1902年(明治35年):内田魯庵が『馬鹿者イワン』という題で、雑誌『学鐙』に連載
- 1906年(明治39年):内田魯庵訳の本『イワンの馬鹿』が出版される
- 1917年(大正6年):翌年には、砥上常雄訳『三人の隠者 ; イワンの馬鹿』も出版される
この中で、『イワンの馬鹿』という題名の本を最初に出したのは、内田魯庵(うちだ・ろあん)です。
ちなみに、もっとあとの時代には、福士幸次郎(1923年)や中村白葉(1932年)、そして芥川の親友の菊池寛なども、この作品を訳しています。
モデルの最有力は内田魯庵?
『イワンの馬鹿』を訳した人の中で、いちばんモデルにふさわしいのは内田魯庵だと考えられます。
内田魯庵は、1868年(慶応4年)に江戸で生まれた評論家・翻訳家・小説家です。
1892年に、ドストエフスキーの『罪と罰』(前半)の翻訳を出して、翻訳家としてデビューしました(英語から訳したもの)。
トルストイの『復活』の翻訳でも知られています。
小説では、世の中のさまざまな立場の人をするどく、皮肉たっぷりに描いた『社会百面相』を書き、「社会小説」の第一人者と言われました。
ドラマの牛丸と、内田魯庵の共通点をまとめてみました。
- どちらも海外文学の翻訳家
- 牛丸も魯庵も、トルストイの『イワンの馬鹿』を日本語にした人
- 牛丸は世の中や庶民の暮らしに文句を言う → 魯庵は社会のゆがみを描く「社会小説」で知られた
- 牛丸は本屋に出没する → 魯庵は大きな書店「丸善」の書籍部の顧問をしていた
とくに注目なのが、内田魯庵が書店「丸善」で働いていたことです。
魯庵は1901年に丸善に入り、丸善が出していた雑誌『学鐙』の編集に、晩年までたずさわりました。
『イワンの馬鹿』の翻訳も、もとはこの『学鐙』に連載されたものです。
ドラマの牛丸が、本郷の書店「ぶくぶく堂」にあらわれ、本がないと騒ぐ「本屋の常連」として描かれているのも、本と書店に人生をささげた内田魯庵の姿と重なります。
名前の「牛丸」にもヒントがある?
ここからは、さらに踏みこんだ考察です。
秋山格之介の代表作『羅城門』『蜘蛛の巣』は、芥川龍之介の『羅生門』『蜘蛛の糸』をもじった名前でした。
小山牛丸という名前にも、何かヒントがかくれているのかもしれません。
- 「魯庵」の「魯」には、「おろか」「にぶい」という意味があります。のんびりした「牛」のイメージと、どこか重なります。
- 「丸」は、魯庵が働いていた書店「丸善」の「丸」かもしれません。
どちらも想像の域を出ませんが、こう考えると、名前にも内田魯庵らしさが入っているように見えてきますね。
年齢不詳の「仙人」っぽさは?
「年齢不詳、神出鬼没」――これが公式サイトでの牛丸のキャッチフレーズです。
1916年のころ、内田魯庵は48才くらい。
のちには文壇の一線からしりぞき、江戸の文化の研究や随筆、思い出話などを書くようになります。
また、若いころから知り合いの家をたずねて長話をするのが好きで、趣味の会もたくさん開いていたため、とても顔が広かったそうです。
ふらっとあらわれて、ひとしきり語って去っていく牛丸の姿は、そんな魯庵の人がらにも通じるところがありそうです。
ただし、ドラマの牛丸は、あくまで実在の人物をヒントにしたドラマの登場人物です。
公式の発表はないため、内田魯庵がモデルというのは、あくまで考察として楽しんでくださいね。
ほかに名前があがる候補(徳富蘇峰・徳冨蘆花)
小山牛丸のモデルとして、ネットでは徳富蘇峰(とくとみ・そほう)と、その弟の徳冨蘆花(とくとみ・ろか)の名前があがることもあります。
どちらもトルストイと深いつながりがあった兄弟です。
徳富蘇峰(1863〜1957年)
『国民新聞』をつくった、明治から昭和にかけてのジャーナリスト・思想家です。
1896年にヨーロッパをまわる旅に出て、ロシアのモスクワでトルストイに会いました。
ただし蘇峰は、そのときトルストイの考えに反論もしています。
本業は新聞記者・思想家・歴史家で、「作家・翻訳家」という牛丸の設定とは少しちがいます。
ちなみに、『中央公論』の名編集長・瀧田樗陰は、若いころ尊敬する蘇峰に進路を相談して、蘇峰の国民新聞社に入ったことがあります。
徳冨蘆花(1868〜1927年)
小説『不如帰(ほととぎす)』のベストセラーで知られる作家です。
若いころは兄の会社で、海外の本の翻訳もしていました。
蘆花はトルストイを心から尊敬していて、1897年にはトルストイの伝記を書いています。
1906年には、ロシアにあるトルストイの家まで会いに行き、家族ぐるみでもてなされました。
日露戦争の前には戦争に反対する文章を発表し、のちにはトルストイの影響で、東京の郊外で半分農業をする暮らしを送りました。
戦争をきらい、土とともに生きた蘆花の生き方は、まさに『イワンの馬鹿』の世界そのもの。
「戦争が始まる!」と騒ぐ牛丸と重なるところもあります。
ただ、2人とも『イワンの馬鹿』は訳していない
ここが大きなポイントです。
国立国会図書館の記録で調べても、蘇峰や蘆花が『イワンの馬鹿』を訳した本は見つかりませんでした。
公式が牛丸を紹介するときに使っているのは、「『イワンの馬鹿』を翻訳した作家」という言葉です。
この点を一番大事なヒントと考えると、実際に『イワンの馬鹿』を訳して本にした内田魯庵のほうが、モデルとしてはより近いと考えられます。
もちろん、牛丸は1人の人物をそのままモデルにしたのではなく、内田魯庵をベースに、トルストイを尊敬した蘆花のような文学者たちのイメージも重ねてつくられた人物なのかもしれませんね。
宇野千代さんと芥川龍之介の史実での出会いについては、こちらの記事でまとめています。
宇野千代と芥川龍之介の接点や関係は燕楽軒?
ブラッサムで小山牛丸役のイッセー尾形とは?
イッセー尾形&中島裕翔
近代演劇の金字塔、舞台『セールスマンの死』
すっかり仲良しな2人の囲み取材📸“パパ”尾形が“息子”中島をべた褒め✨️
照れ笑いしながら「ハードル上がる~」https://t.co/uVOrGU07II#セールスマンの死 pic.twitter.com/s8OUkuR5Bx— オリコンニュース (@oricon) June 26, 2026
イッセー尾形さんのプロフィール
- 名前:イッセー尾形(いっせー・おがた)
- 本名:尾形一成(おがた・かずしげ)
- 生年月日:1952年2月22日
- 出身地:福岡県福岡市
- 血液型:A型
芸名の「イッセー」は、本名の「一成」を音読みしたものです。
お父さんの仕事の関係で、北九州市の小倉や長崎県の佐世保などを転々とし、小学3年生のときに東京へ引っ越しました。
「一人芝居」の第一人者
イッセー尾形さんといえば、なんといっても「一人芝居」。日本でこのスタイルを確立した第一人者として知られています。
19才のときに新宿の演劇の養成所に入り、建築現場で働きながら一人芝居の腕をみがいてきました。
1981年に日本テレビの『お笑いスター誕生!!』で金賞をとって、広く知られるようになります。
イスや電話など、最低限の小道具と衣装だけで、ふつうの人たちの何気ない日常を演じ分ける一人芝居は、国内だけでなく、アメリカやヨーロッパでも公演してきました。
1985年には芸術選奨文部大臣新人賞を受賞しています。
朝ドラ・大河ドラマにも多数出演
朝ドラには、「ブラッサム」の前にも何度も出演しています。
- 『凛凛と』(1990年)
- 『つばさ』(2009年)ラジオの男 役・語り
- 『まんぷく』(2018年)剛田一隆 役
- 『スカーレット』(2019年)深野心仙 役
大河ドラマにも、たくさん出演しています。
- 『独眼竜政宗』(1987年)国分盛重 役
- 『炎立つ』(1993年〜1994年)藤原経輔 役
- 『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年)永田秀次郎 役
- 『青天を衝け』(2021年)三野村利左衛門 役
- 『どうする家康』(2023年)鳥居忠吉 役
『どうする家康』で演じた鳥居忠吉の息子・鳥居元忠については、こちらの記事でご紹介しています。
鳥居元忠の死因と伏見城の最後とは?血天井はどこ?
実在の人物を演じた映画も
映画では、実在の人物を演じたことも多くあります。
- 『太陽』(2005年)昭和天皇 役
- 『沈黙 -サイレンス-』(2016年)井上筑後守 役
- 『漫画誕生』(2019年)北沢楽天 役
マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』では、ロサンゼルス映画批評家協会賞の助演男優賞で次点に選ばれました。
日本の近代漫画の祖・北沢楽天や昭和天皇など、実在の人物を演じてきたイッセー尾形さん。
実在の翻訳家がモデルかもしれない小山牛丸を、どう演じるのかも楽しみですね。
まとめ
朝ドラ「ブラッサム」で、イッセー尾形さんが演じる小山牛丸は、珠が愛読する『イワンの馬鹿』を訳した翻訳家です。
公式からモデルは発表されていませんが、『イワンの馬鹿』という題名で本を出した最初の翻訳家・内田魯庵が、いちばんモデルに近いと考えられます。
海外文学の翻訳家で、社会を皮肉る小説を書き、書店「丸善」で働いていた内田魯庵。
世の中に文句を言いながら本屋にあらわれる牛丸の姿と、たくさん重なるところがあります。
演じるイッセー尾形さんは、一人芝居の第一人者で、朝ドラや大河ドラマにも数多く出演してきたベテラン俳優です。
「年齢不詳、神出鬼没」の牛丸が、これから珠にどんな影響を与えるのか、注目ですね!