朝ドラ「ブラッサム」第5週で、宇野千代(うの・ちよ)さんがモデルの珠と、芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)がモデルの作家・秋山格之介が出会いました。
ドラマを見て、「本当に宇野千代と芥川龍之介に接点はあったの?」と気になった方も多いのではないでしょうか?
じつは2人は、本郷にあった洋食店「燕楽軒(えんらくけん)」で、実際に出会っていました。
今回は、ドラマでの2人の出会いのネタバレと、宇野千代さんと芥川龍之介の史実での接点や関係、そして宇野千代さんが燕楽軒で出会ったほかの作家たちについてご紹介します。
朝ドラ「ブラッサム」で宇野千代と芥川龍之介がモデルの2人が出会った!
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🌸「首都公論」副編集長
山中勇三/ #井浦新<役柄>
黒崎の右腕。一流の作家を数多く抱える「首都公論」を、冷静な判断力で支える敏腕編集者。#ブラッサム#2026年秋放送開始 pic.twitter.com/QYpjyCZmXw— 朝ドラ「ブラッサム」公式 (@asadora_bk_nhk) July 9, 2026
「ブラッサム」は、2026年度後期のNHK連続テレビ小説で、9月28日から放送がはじまりました。朝ドラとしては115作目です。
石橋静河さんが、主人公の葉野珠(はの・たま)にふんしています。
珠のモデルは、大正・昭和・平成を生きた作家の宇野千代(うの・ちよ)さんです。
ただし、宇野千代さんの人生をそのままなぞるのではなく、原作のないオリジナルの物語。
人の名前やできごとにアレンジを加えた、ドラマならではのストーリーになっています。
山口県の岩国で生まれた珠は、本を読むのが何より好きな女の子。
代用教員をやめさせられたあと、うわさから逃げるように岩国をはなれ、いとこの保(金子大地)をたよって東京へやってきます。
東京で珠を待っていたのは、作家や編集者など、文学の世界で生きる人たちとの出会いでした。
「書くこと」に人生をかけていく珠が、恋や結婚、大きな災害や戦争をくぐりぬけて生きる姿が描かれていきます。
物語を手がけるのは櫻井剛さんと小松與志子さんの2人の脚本家。オープニングでは、YOASOBIの「咲き誇れ」が流れます。
宇野千代と芥川龍之介がモデルの2人が出会った!
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🌸作家
秋山格之介/ #高良健吾
鋭い洞察と独自の感性で名を馳(は)せる文壇の寵児(ちょうじ)。代表作に『羅城門』『蜘蛛の巣』など。/
🗣#ブラッサム の放送は #9月28日スタート
\ pic.twitter.com/ZhBVfSQzd3— 朝ドラ「ブラッサム」公式 (@asadora_bk_nhk) August 27, 2026
ここからは、第5週「狂騒で、東京」のネタバレです。
秋山格之介(高良健吾)は、『羅城門』『蜘蛛の巣』などで知られる、いま一番人気の若手作家。
芥川龍之介の『羅生門』『蜘蛛の糸』を思わせる作品名で、モデルが芥川だとすぐにわかるようになっています。
1.本郷の書店ですれちがう
1916年(大正5年)10月、保と東京で暮らしはじめて1か月の珠。
本郷の書店「ぶくぶく堂」に入るとき、背の高い男性客とすれちがいます。
店主の本田から、その客こそ売れっ子作家・秋山格之介だったと聞かされ、珠はびっくりします。
2.西洋レストラン「悠樂軒」でふたたび
仕事をさがしていた珠が見つけたのは、西洋レストラン「悠樂軒(ゆうらくけん)」のウエイトレスの仕事でした。
この店には、文芸雑誌『首都公論』の黒崎大三郎編集長をはじめ、作家や編集者がしょっちゅう顔を出します。
ある日、店で洋書を読みふけっているお客さんがいて、先輩ウエイトレスの松子から、それが秋山だと教えられます。
3.落ちこむ珠に、秋山がかけたことば
書き上げた小説を黒崎に読んでもらった珠ですが、「稚拙。つまらん」と、ばっさり切りすてられてしまいます。
そんな珠に声をかけたのが、店に来ていた秋山でした。
小説を酷評されたと打ち明ける珠に、秋山は「こき下ろされて傷つくのは自分を信じた証拠だろう?」と言って、はげましてくれたのです。
作家をめざす珠と、売れっ子作家の秋山。ドラマの2人は、レストランでの出会いからつながっていきます。
秋山格之介役の高良健吾さんのことは、こちらの記事でくわしく紹介しています。
秋山格之介のモデルは芥川龍之介【朝ドラ ブラッサム】
宇野千代と芥川龍之介の接点や関係は燕楽軒?
では、史実の宇野千代さんと芥川龍之介には、本当に接点があったのでしょうか?
答えは「あった」です。2人をつないだのが、本郷の洋食店「燕楽軒」でした。
宇野千代が働いた本郷の洋食店「燕楽軒」
宇野千代さんが東京に出てきたのは、1917年(大正6年)。
のちに夫となる藤村忠さんが、東京帝国大学に入学するのに合わせての上京でした。
東京では、中国人留学生に日本語を教えたり、写真のモデルをしたり、出版社で事務の仕事をしたりと、いろいろな仕事を転々とします。
そのひとつが、本郷三丁目にあった高級な西洋料理店「燕楽軒」での給仕(ウエイトレス)の仕事でした。
燕楽軒は、西洋料理の料理人だった西尾益吉さんが開いたお店です。
宇野千代さんがここで働いたのは、わずか18日間。
ですが、この18日間が、のちに作家・宇野千代が生まれるきっかけになりました。
「東京 本郷 西洋料理 燕楽軒」
築地精養軒料理長を務めた西尾益吉のお店。
精養軒時代は若き日の天皇の料理番、
秋山徳蔵も彼の下で影響を受けたとか。。燕楽軒は中央公論社が近かったので芥川
菊池寛、久米正雄も通ったり宇野千代が
ちょっと働いてたなんて話もあるらしく。。#マッチラベル pic.twitter.com/IiFeICqgUp— pieinthesky (@pieinthesky4) December 8, 2025
燕楽軒は作家たちのたまり場だった
燕楽軒の向かいには、大手の出版社・中央公論社がありました。
そして、雑誌『中央公論』の名編集長として知られた瀧田樗陰(たきた・ちょいん)が、毎日のように燕楽軒にお客さんとして来ていたそうです。
瀧田は、当時売り出し中の若い作家たちを連れて、燕楽軒にやってきました。
その中にいたのが、芥川龍之介です。
こうして宇野千代さんは、燕楽軒で芥川龍之介と出会いました。
ドラマで珠が働くレストランの名前は「悠樂軒」。
人気雑誌の編集長が作家たちと集まってくるところまで、史実の燕楽軒とよく似ていますね。
ドラマの雑誌『首都公論』と、史実の『中央公論』も、名前がそっくりです。
そのころの芥川龍之介は?
宇野千代さんが東京に出てきた1917年ごろ、芥川龍之介は25才くらい。
1915年に『羅生門』を発表し、1916年には『鼻』が夏目漱石に絶賛されて、注目を集めはじめていた若手作家でした。
このころの芥川は、神奈川県の横須賀にある海軍機関学校で英語の先生をしながら、小説を書いていました。
1918年には『蜘蛛の糸』を発表しています。
ドラマで秋山が「若手一番の作家」と言われているのも、ちょうどこのころの芥川の姿と重なります。
芥川の短編『葱』のモデルは宇野千代
燕楽軒での出会いは、芥川の作品にも残っています。
芥川龍之介の短編小説『葱(ねぎ)』は、燕楽軒で働いていたころの宇野千代さんがモデルだと言われています。
『葱』は、1920年(大正9年)1月に雑誌『新小説』に発表された作品です。
主人公は、神田のカフェで働く女給の「お君さん」。
仕事以外の時間は、女髪結い(女性の髪を結う職人)の家の2階に部屋を借りて暮らしています。
お君さんは、店のお客さんの田中君とデートに出かけます。
恋にうっとりしていたお君さんですが、帰り道の八百屋で、とても安い葱を見つけたとたん、生活のことを思い出して、葱を2束買ってしまう……というお話です。
宇野千代さんも、東京に出てきたころは、小石川の髪結い床の2階に下宿していました。
カフェの女給で、髪結いの2階に住んでいるお君さんは、たしかに当時の宇野千代さんと重なります。
『葱』は、宇野千代さんと、燕楽軒で知り合った作家・今東光(こん・とうこう)さんとのことをもとに書かれた、とも言われています。
さらに、『葱』に出てくる先輩の女給の名前は「お松さん」。
ドラマで珠の先輩ウエイトレスの名前が「松子」なのも、もしかすると『葱』へのちょっとした目くばせなのかもしれませんね。
『葱』は著作権が切れていて、青空文庫で無料で読むことができます。
芥川龍之介『葱』青空文庫
ドラマと史実の共通点まとめ
ドラマと史実を見くらべると、こんなに共通点があります。
- 珠が働く「悠樂軒」 → 宇野千代さんが働いた本郷の「燕楽軒」
- 人気雑誌『首都公論』 → 燕楽軒の向かいにあった中央公論社の『中央公論』
- 秋山の『羅城門』『蜘蛛の巣』 → 芥川の『羅生門』『蜘蛛の糸』
- 先輩ウエイトレスの「松子」 → 『葱』の先輩女給「お松さん」
ドラマの珠と秋山の出会いは、宇野千代さんと芥川龍之介の史実の出会いがもとになっているようです。
宇野千代が燕楽軒で他に出会った人は?
宇野千代さんが燕楽軒で知り合ったのは、芥川龍之介だけではありません。
のちに日本の文学を代表することになる人たちと、たった18日間で次々に出会っています。
瀧田樗陰(『中央公論』編集長)
燕楽軒にほぼ毎日来ていた、『中央公論』の名編集長です。
夏目漱石や森鷗外に原稿を書いてもらい、芥川龍之介など、たくさんの新人作家を世に送り出したことで知られています。
宇野千代さんが作家になるときにも、瀧田との縁が生きました。
1921年に懸賞小説で一等に選ばれて作家デビューした宇野千代さんは、次の作品『墓を発(あば)く』の原稿を、燕楽軒の常連だった瀧田に送ります。
しばらく返事がなかったので、1922年に東京まで確かめに行くと、作品はすでに『中央公論』に載っていて、大金の原稿料を受け取ったそうです。
ドラマの『首都公論』の編集長・黒崎大三郎がこれからどう描かれていくのかも、気になりますね。
菊池寛
芥川龍之介の親友で、のちに出版社「文藝春秋」をつくり、「芥川賞」「直木賞」をはじめた作家です。
燕楽軒で宇野千代さんが知り合った作家の1人です。
久米正雄
芥川龍之介や菊池寛と、学生時代から一緒に同人誌『新思潮』を出していた作家です。
久米正雄も、燕楽軒で宇野千代さんと出会っています。
佐藤春夫
詩人・小説家として活躍した作家です。
宇野千代さんは燕楽軒で、佐藤春夫とも知り合いました。
今東光と今日出海
今東光(こん・とうこう)は、のちに作家として活躍し、天台宗のお坊さんにもなった人物です。
宇野千代さんは燕楽軒で今東光と親しくなり、短い間つきあっていたとも言われています。
芥川の『葱』は、このころの2人のことをもとにしたとされています。
今東光の弟で、のちに作家・初代文化庁長官になった今日出海(こん・ひでみ)も、燕楽軒で宇野千代さんと知り合った1人です。
今日出海は、当時の宇野千代さんのことを「本郷の女王(クイン)」とふり返っていたそうです。
燕楽軒でのたった18日間で、宇野千代さんは、そうそうたる作家たちと知り合ったんですね。
ちなみに、ドラマで珠といっしょに上京した保にも、実在のモデルがいます。くわしくはこちら。
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まとめ
朝ドラ「ブラッサム」第5週で、宇野千代さんがモデルの珠と、芥川龍之介がモデルの秋山格之介が出会いました。
史実でも、宇野千代さんと芥川龍之介には接点がありました。
2人が出会ったのは、宇野千代さんが18日間だけ給仕として働いた、本郷三丁目の洋食店「燕楽軒」です。
燕楽軒には、向かいの中央公論社の編集長・瀧田樗陰が若い作家たちを連れて通っていて、宇野千代さんはそこで芥川龍之介や菊池寛、久米正雄、佐藤春夫、今東光たちと知り合いました。
芥川の短編『葱』は、このころの宇野千代さんがモデルだと言われています。
ドラマの「悠樂軒」や『首都公論』、先輩ウエイトレスの「松子」など、史実を知るとドラマがもっと楽しくなりますね!